顔の骨も変形する?

今回は皮膚と顔の頭蓋骨、特に前頭骨の変形についてお伝えします。
老化といえば筋肉や皮膚の衰えがイメージできる。皮膚や筋肉は、年齢とともに変化する対象だと理解されている訳です。では骨、頭蓋骨は変化する対象でしょうか?

ベースの頭蓋骨はそのままの形で、その上にある筋肉や皮膚が変化すると思われていませんか? 頭蓋骨も、年齢と共にその形は変化し、老化していく対象です。
2011年、アメリカの美容医療に関する医学雑誌で、顔の骨が年齢とともにどのように変化するか、その分析が発表されています。20代から40代と65歳以上の女性の頭蓋骨を比べると、老化によって頭蓋骨全体が下方向に崩れている。そして眼窩、眼球が入る目の窪みが上下方向に大きく広がり、若い時に比べ2~3㎜ほど幅が広くなっているなどの変化が報告されています。
頭蓋骨の大きさや形状は変わる、この知識をまずお持ち下さい。

前頭骨というのは、イラストのブルーの部分。いわゆる額、おでこの部分です。

ここが、どう変形するかというと、 額と頭頂部が張り出してくる。

正面から見ると、額が四角く厚みを持って前に出っ張る。頭頂部も同じように盛り上がる。そして額の肥大に反して、こめかみ部分は窪んだように痩せます。 すると目元の張りがなくなり、やつれて老けて見えてしまう訳です。
このような変形は、日常的に頭が締め付けられる感覚や頭痛の頻度が多いという症状が見られます。

この額の変形は、どのようにして起こるのか? その原因は、大きく分けて2つ。
①引っ付いていた前頭縫合が離れていく 。
②眼窩の広がり。
この2つの現象が額の変形の要因です。

では、前頭縫合が離れていく現象について。


もともと前頭骨は2歳頃までは左右2個に分かれていて、6歳以降になると完全に癒合して1つの骨になります。この分かれ目を前頭縫合と言います。この前頭縫合が完全に合わさっていてもわずかな柔軟性が残っています。頭蓋骨が動くわずかなリズムに合わせて、前頭骨は二つの動きをすることが分かっています。

額の変形が起こっているとき、前頭骨上の皮膚はピンと張りつめたように緊張しています。前頭骨に張り付き、下部組織とのゆとりがないので皮膚が動きません。これは、皮膚張力がバランスを崩している状態です。
そうなると、骨を含めた下部組織の位置を固定させる皮膚の機能が働かなくなります。持続的な皮膚の圧力が弱まると、前頭縫合を起点に骨や下部組織は斜め下方向へとズレて固定してしまいます。

もともと皮膚張力の正常なベクトルは、前頭骨を二分する前頭縫合に向かっています。これに沿って、皮膚張力を中心に誘導すると、額やこめかみなど影響を受けていた部分に本来の膨らみが戻り始めます。実感としては、ほっとする安堵感や解放されたような気持ち良さが感じられます。

次は、額を変形させるもうひとつの原因、眼窩の広がりです。
イラストの目の窪み部分、ここが眼窩です。

ここは、ひとつの骨が窪みを作っている訳でなく、小さな7つの骨の組み合わせで形成されています。
額側には前頭骨。鼻側に涙骨、篩骨。側頭側に頬骨。下側に上顎骨。奥には蝶形骨と口蓋骨。

イラストを見てお分かりのように、眼窩の奥にひびが入っていますよね。このヒビが7つの骨のつなぎ目、結合部分です。 頭蓋骨は通常28個の骨から構成されていて、縫合によって互いに連結されています。新生児の時には、成長のためにこの部分は繊維状の結合組織でできていて、動きやすいようになっています。それが、成人になるにつれ徐々に骨化して硬くなっていく訳です。

そのように厳密に接合されていても、先ほど述べた前頭骨のように境目は柔軟に動く。その境目が表面の皮膚張力の歪みのベクトルに反応し、引っ張られるようにわずかに開く。その開きを埋めるように窪みを形成する7つの骨も大きくサイズを変えてしまう。そうなると眼窩自体の窪みも広がると考えています。

アメリカの医学雑誌に掲載された、老化によって眼窩が数ミリ広がるという現象は、このような変形のプロセスから起こっているのではないでしょうか。 このような眼窩の広がりと額の肥大は、連動して起こっています。

前頭骨の額が大きくなりながら下方に広がる。眼窩全体も広がりながら下がる。 すると、アメリカの医学雑誌の論文通り、老化によって頭蓋骨全体が下方向に崩れるという現象を起こす訳です。

この頭蓋骨の崩れは、容姿を急激に老化させてしまいます。
目元のシワやくま、フェイスラインの崩れ。この原因を皮膚や表情筋に向ける前にベースとなる形、頭蓋骨の変形を無視して改善はあり得ないというのが、私の考え方です。

顔の表層に現れたシワやたるみ、ハリのなさに目が向くのは分かります。ですが、よく顔を観察して見て下さい。それを気にする前に、そもそも若い時と比べ、目・鼻・口の位置が下がっていませんか。このベースの変形が、顔の表層にシワやたるみとして現れているのだから、根本を改善しなければ変わらないのです。

この改善に用いているのが皮膚張力。 皮膚は薄い膜。骨は太く硬い。骨の上に筋肉、脂肪、皮膚が層状に積み重なっているというのが常識だと思いますが、私の施術上の経験から言えば逆です。表面の皮膚がベースとなって、脂肪、筋肉、骨が重なっている。皮膚がずれれば、その下にある骨も動くというのが施術経験から得られた実感です。

目は顔の中でも特に動く部位です。

眼輪筋や頻繁に動く上瞼の動きは、皮膚科学で述べたメカノバイオロジ―の内部刺激として皮膚張力のバランスを担う働きがあるのでは、と考えています。
目元の変形により、目の動きがぎこちなくなる。その不自然な動きからくる内部刺激によって、さらに皮膚張力のバランスが歪み、変形が加速する。この悪循環が起こるのです。

目が動くとき、わずかながらも額の前頭骨も伴って動きます。目と額の変形は一体で起こるので、目と額の負荷のある動きからくる内部刺激と、変形からくる皮膚の固着が相まって、頭部の締め付け感や肩こりまで引き起こすと考えています。

顔の形状でよく見られるのが、眉毛部分が硬く盛り上がること。

これは下方に広がろうとする額と、四方に広がる眼窩が眉毛部分でぶつかるように盛り上がる現象です。内部的には眼輪筋の土台となる眼窩隔膜と前頭骨骨膜が互いに広がろうとして起こります。

この2つの広がりの影響は、眉間や鼻筋を硬化させ広げていきます。見た目には左右の眉の間が広がる、鼻が高さを失い扁平に広がるという変形につながります。
額と眼窩の広がりによる影響をまとめると、
<顔の影響では>
・目の下のくまが長くなる
・眉部分が盛り上がりながら、ハの字になる
・眉の毛流が乱れる
・まつ毛が少なくなり、生え方が前方に向かわない
・まつ毛の根元内側の粘膜がむき出しになる
・上瞼が浮腫むように広がり、ある程度を超えると一気に痩せる
・上瞼の目のキワにコーティングしたような張り付き
・目尻、目頭の皮膚はちりめん状に張りを失い、暗くなる

<顔の形状では>
・目の位置が斜めに下垂する
・顔下半分の拡大、委縮
・頬の痩せ
・鼻、口の下垂と変形
・額、頭頂部の張り出し

<動きでは>
・くっきりと目が開けられない、閉じられない

<本人の苦痛>
・目の周りが重い
・眼球に渋皮がはったようなザラザラ感
・目を開けていることが苦痛
・こめかみや頭部に締め付けられているような違和感

<体への影響>
・肩、首コリ
・歩くとき足が前に出にくい
・前傾姿勢

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