顔の変形が起こるとき、表面の皮膚とその内部に歪みが起こります。
先ず、皮膚の歪みについて。実際に皮膚が歪むってどうイメージすればいいのか? 皮膚は大きな1枚の面です。1枚の面だからと言って、この皮膚面全体が上下左右に一体となってズレる訳ではありません。
イラストのように、顔が平面なら上にある皮膚も全体で大きくズレるでしょうが、目や鼻、口の凹凸があるので面全体では動かず部分的にねじれるように皮膚が歪みます。ねじれた皮膚は引っ張られて緊張しています。
それが持続すると、ねじれた部分とその周囲の皮膚はしだいに伸ばされて面積を広げてしまう。こうなると、もともとの骨格に対して皮膚全体の面積が合わない、大きくなってしまう訳です。
その時の皮膚は、厚みを失って薄いというのが特徴です。そのように皮膚が歪んだ時、その内部はどうなっているのか? 当然、内部も歪みます。皮膚がねじれている部分の内部は、硬く扁平になる。
顔全体では、皮膚の面積が広がった分、それに合わせるように骨を含めた内部も下方に位置がズレる。こういう現象が起こる訳です。
このイラストは、典型的な老化の比較です。
一般的には、この原因は皮膚や表情筋の「質」そのものが、老いによって変化する。だから、それに対して必要なものを補う。この考え方に沿って、様々なアプローチが美容界で広がっている訳です。
例えばコラーゲンが不足してるから補う、表情筋がたるんでるから引き締めるなど、老化した顔と若いときとの違いを埋めるという視点です。私は補うことも必要だと思いますがこの老化現象の根本には、「もともとの骨格に対して皮膚の面積が合わなくなる」という現象がある、と考えています。
では、この「もともとの骨格に対して皮膚の面積が合わなくなる」という現象。それについて詳しく説明します。
先ずは、表面の皮膚と内部の歪みの関係性、その法則からお話しします。 顔は立体構造です。そしてすべての厚みが均一ではありません。皮膚から骨格までの距離、その厚みが部分的に違うということです。
このイラストは、「女性の顔面部皮下脂肪の分布解析」という論文からの引用です。標準的な顔面の皮下脂肪の分布を表しています。
楕円の色が濃いと、皮下脂肪の厚みが高い。一番濃い楕円は10㎜以上、一番薄い部分は3㎜になります。これを見ると、頬骨付近の脂肪は厚く、眉間や顎などは薄いのが分かります。
これは、私の実態観察からくる厚みの分布。
引用したレポートは皮下脂肪のみでしたが、そこに筋肉なども含めた皮膚下の構造全体の厚みの感触としての分布です。 額から眉間、鼻の上、そして側頭部などは皮膚から骨格までの厚みが薄い。このように、厚みが薄いところは顔構造の曲がり角になっている部分。そういう部分は、皮膚が歪みやすく変形の中心になるポイントです。
そして、こういう事も言えます。変形が起これば、その部分の厚みが失われる。厚みがあった部分も薄い部分も、もともとの厚みに関係なく、さらに薄くなってしまうということです。
この顔のように、目や鼻、頬などそれぞれに部分的な厚みがある。このふっくらとしたそれぞれの厚みが合わさって顔の若さの印象を与えている訳です。ですが変形が強くなると、それぞれの部分的な厚みが骨に張り付いてるような薄さになってしまう。そうなると、顔の立体感が失われて、のっぺりしだす。
では、「顔の厚み」について構造的に説明してみます。これは、私独自の現象の捉え方です。先ず、分かりやすいように顔を3層構造とします。皮膚と内部、内部は脂肪や表情筋、靭帯などをひっくるめます。そして骨格を含めて3層です。
この3層は、皮膚を起点に内部と骨格の位置が固定されています。皮膚の歪み方は様々で、ねじれてたり、折れるように重なってたり、その複雑な歪み方にあわせて内部も歪みます。同じように、三層をつなぎとめていた線維束も歪む方向に引っ張られて倒れていく。
そして皮膚の歪みは、皮膚面積を広げます。すると内部も広がろうとして扁平になっていく。その過程で皮膚の歪みに抗おうとして内部は硬くなり、扁平化しながらもともとの位置からずらされていく訳です。
線維束の歪みで分かりやすい現象は、毛穴の開きです。
真皮の弾性繊維や網状層の膠原繊維束は毛穴の外側と密着しているので、線維の走行の歪みに引っ張られ、毛穴の形状を変えてしまいます。毛穴を広げたり、毛穴を埋めるように盛り上げる。盛り上がる場合は独特の肌触りで、私はチキンスキンと呼んでいるのですが、細かなザラザラ感があります。
前回の投稿で眉が変形すると眉毛の毛流が乱れるといいましたが、これはこのことです。線維の歪みで毛穴が形状を変え、角度自体が変わるので毛の生え方がバラバラになるのです。
では、骨はどう歪むのか。皮膚の歪みが骨に影響する部分は、もともと厚みの薄い部分によく見られます。皮膚と骨格の距離が短い部分。例えば、Tゾーンの額や鼻筋。前頭骨、鼻骨、そして鼻軟骨、上顎骨などです。これらは、もともと薄い分だけ皮膚から骨格までの線維束が短い。ですから歪んだ時の限界点が短いので、下部組織の歪みだけでは収まらず、骨にまで歪みの力が及びます。
このときの施術での感触は、位置を固定させている線維束が骨膜を引っ張り、跳ね上げてる感じです。骨の表面は、岩に貝が張り付いているように、もともとの骨にこぶのような厚みが付着し、骨の形状を変えてしまっている。これが進行すると、顔全体がゴツゴツしてくる。
このように顔の厚みが失われ、ふっくらしていた部分が扁平になることで、皮膚の面積が広がり、もともとの骨格にそぐわなくなる。ですから、私の変形改善の見極めのひとつに顔のふっくら感が戻ったかどうか、ここを大切にしています。
皮膚の硬さ、これは変形の大きな要因です。局所的に皮膚が硬くなると、骨格のずれを起こしてしまう。
では、皮膚が硬くなる代表的な要因をあげてみます。
①感情の高ぶりやストレスで、顔の一部分に強い緊張が持続している場合 眉間や額、目元の皮膚が硬くなります。
②スキンケアでの局所的な手の摩擦や圧 毎日の動作が積み重なると、手の摩擦でも皮膚は守ろうと厚みを増します。
③過度な日焼け 皮膚の硬さと薄さはある意味同じで、皮膚が硬いと薄いのです。
皮膚科学のレポートでも、薄い皮膚を調べると角層の層数が多いことが分かっています。これは、古い角層がはがれずに堆積して層を増し圧縮されているということです。 顔の皮膚が薄い部分、瞼などは洗わないという考え方もありますが、私は逆です。薄い部分も、しっかり洗って固着した角層を取り除く必要があります。
ただし、これは洗い方が重要になりますので、実践を進めている訳ではありません。もともと薄い部分にも適度な厚みがあります。そのラインを越えて、薄く硬くなってしまえば変形を招く要因になります。スキンケアでも、正しく行えば十分に変形の改善はできるのです。
この記事へのコメントはありません。