顔は動く臓器

顔面のわずかな運動が
全身を制御する理由

あなたは今日、顔をどう動かしましたか?
笑顔? 無表情?

その無意識の顔の動き、あるいは“動かさなさ”が、
あなたの体を静かに崩しているとしたら?

加齢で顔の形が崩れた、と思っているかもしれません。
しかしその“歪んだ顔”は、
すでにあなたの姿勢・体幹・バランス感覚をゆがめ、
筋肉や内臓の働きすら狂わせているのです。

私たちはこれまで、「顔=見た目」の世界に囚われてきました。
でも今、問い直す時です。

美容目的で眺めているその顔は、
すでに“あなたの身体機能”に深く関わっているのです。

にもかかわらず、その本質に目を向けず、ダイエット、
筋トレ、整体、エステ‥‥それらにどれだけの効果が
あるのでしょうか?

顔という起点が乱れたままでは、
何を積み上げても“本当の再生”は始まりません。

顔は運動連鎖の起点である

生物の進化を辿ると、
脊椎動物の構造は「頭=顔」から始まります。

古代生物“ヤツメウナギ”に象徴されるように、
骨格は頭部から生まれ、そこから背骨が伸び、
内臓が形成され、皮膚が包み込む。
つまり、顔は生物設計の“原点”なのです。

その顔の運動は、単に表情を作るためだけのものではありません。
眼輪筋・口輪筋を中心に放射状に広がる筋肉は、
収縮することで「集まり」=中心化し、
全身にその張力と振動を伝播します。
これが、“顔から始まる運動連鎖”です。

顔の動きは身体機能のスイッチ

私たちが「力を出す」とき、無意識に顔を収縮させます。
フィギュアスケーターが回転に入る瞬間、
顔の中心筋群を締め、軸を固定するように。

これは偶然ではありません。
顔の筋肉を収縮することが、身体全体の“初期設定”となり、
筋膜を介して骨格や内臓の安定性に波及しているのです。

逆に言えば、顔の動きが乱れれば、
身体の動きやバランス感覚まで崩れていくということ。
そしてこれは、加齢による身体機能の低下と、
顔の機能低下がリンクしていることを意味します。

顔だけで、全身は変わる

私は約37年間、たった小さなお盆ほどの面積である「顔」を
洗顔という手法で整えるだけで、姿勢、歩行、体型までもが
変化する現象を何千回も体験してきました。

現在62歳の私自身も、運動習慣は一切ないにも関わらず、
・14cmヒールで片足ジャンプ
・ヒールで簡単に幅跳び
・体幹の安定としなやかさ。

これらを維持できているのは、
顔の柔軟性と張力の回復を日々整えているからです。

つまり、「顔を整えること=身体機能の根本回復」なのです。

顔の運動は“身体の中枢制御”である

顔は、単なる感情表現のための部位ではありません。
それは、全身の動き・姿勢・新陳代謝・神経反応を開始・制御する
「構造的中枢」です。

それゆえ、顔の歪み、表情の固着、皮膚の硬化は、
やがて運動能力の衰え、体型の崩れ、そして老化の加速へとつながります。

顔の運動は、美容の話ではありません。
生命機能の話なのです。

あなたの「上手く動かない顔」は、
あなたの「動けない体」の、本当の原因ではありませんか?

【参考文献】
1. Vernooij, C.A., et al. (2016).
“The effect of aging on muscular dynamics underlying movement pattern changes.”
Frontiers in Aging Neuroscience.
加齢に伴う筋力や筋協調の再編成(reorganization)が、
運動パターンの初期化と実行にどのような影響を及ぼすかを解析。
顔面筋の制御が全身運動の基礎にある可能性に言及。

2. Sampallo-Pedroza, R.M., et al. (2014).
“Description of oral-motor development from birth to six years of age.”
Revista de la Facultad de Medicina.
口輪筋・舌・顎の発達と体幹・姿勢の相互関係を記述。
乳児期からの「顔の動き」が姿勢と運動の発達に直結していることを明示。

3. Horak, F.B., et al. (1997).
“Postural perturbations: new insights for treatment of balance disorders.”
Physical Therapy, 77(5), 517–533.
顔や頸部の初期反応が姿勢制御全体に与える影響を分析。
筋連鎖(muscle synergy)の開始点としての頭部・顔の役割を示唆。

4. Shim, J.K., et al. (2004).
“Age-related changes in finger coordination in static prehension tasks.”
Journal of Applied Physiology.
顔とは異なる部位の研究だが、
「細かな運動制御の乱れ」が姿勢保持や体幹動作に波及する例を示しており、
顔面筋に応用可能な示唆を含む。

5. Di Fabio, R.P., & Emasithi, A. (1997).
“Aging and the mechanisms underlying head and postural control during voluntary motion.”
Physical Therapy, 77(5), 458–475.
高齢者における「頭部の位置調整」と姿勢制御の連動性を調査。
顔・頭部の動きが全身のバランス制御と密接に関連していることを実証。

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