皮膚は“覆う”だけの存在ではなかった
理化学研究所が2021年に発表した研究は、
皮膚毛包の「基底膜」が単なる境界線ではなく、異種組織同士を“統合・接続”する
高度なインターフェースであることを初めて明らかにしました。
これにより、皮膚が内部構造に指令を送り、
全身の組織秩序を再配置している可能性が浮かび上がってきたのです。
この知見は、まさに“天動説から地動説”への転換に等しい衝撃をもたらします。
なぜならば、従来の皮膚観は「外的刺激に反応する感覚器」あるいは
「バリア臓器」にとどまっていたからです。
この研究は、皮膚が「組織間シグナルのハブ」であり、
「構造情報の発信源」であることを強く示唆しています。
発生学的視点から見る、皮膚の“構造誘導力”
あ胎生期の生命形成過程では、外胚葉(皮膚になる部分)と
内胚葉(消化器など内臓系を形成する部分)の位置関係こそが、
身体構造の成立を左右すると言われています。
つまり、皮膚とは外胚葉の末裔として、
常に“身体の構造計画書”に関与している存在なのです。
この視点から見ると、皮膚は外部からの物理刺激を感知するだけではなく、
それを内部の幹細胞や器官構造に伝達し、
「どこに・何を・どう再生させるか」を決定する
役割を担っている可能性があるのです。
私の現場観察と一致する“逆再生”現象
皮膚のわずかな刺激によって、内部構造が「整列し始める」現象。
私はこれを37年にわたる現場観察で幾度も確認してきました。
たとえば、劣化角質を丁寧に取り除き、正しい洗顔で皮膚に指令を送るだけで、
姿勢、骨格、内臓の配置までが徐々に整っていく様子を目の当たりにしてきたのです。
理研の研究と胎生学的知見をつなぎ合わせると、この現象は決して偶然ではなく、
皮膚が本来持っていた「組織設計機能」が発動している証拠だと確信します。
【参考文献】
https://www.riken.jp/press/2021/20210510_1/
理化学研究所の論文(理化学研究所の論文(2021年5月10日プレスリリース)
従来の「皮膚は内臓の防御壁」という常識を覆し、
皮膚そのものが内部構造(骨格・臓器・神経)の発達や再生に
指令を出している中心的な存在であることを示唆。
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1. Tsutsui, K., et al. (2021).
Mapping the molecular and structural specialization of the skin basement membrane for inter-tissue interactions.Nature Communications.
毛包周囲の基底膜が、神経・筋肉・線維芽細胞と個別に結びつく「構造的インターフェース」であることを発見。
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2. Charras, G., & Sahai, E. (2014).
Physical influences of the extracellular environment on cell migration.
Nature Reviews Molecular Cell Biology, 15(12), 813–824.
DOI: 10.1038/nrm3897
外部からの物理的刺激(例:圧力や引っ張り)が、細胞構造や移動に与える影響を詳述。
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3. Gilbert, S.F. (2010).
Developmental Biology (9th ed.)Sinauer Associates.
外胚葉の配列が内胚葉の臓器誘導を導く「胚葉間誘導」の原理を詳説。
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4. Rittié, L. (2016).
Cellular mechanisms of skin repair in humans and other mammals.
Journal of Cell Communication and Signaling, 10(2), 103–120.
DOI: 10.1007/s12079-016-0330-1
皮膚修復の過程でどのように幹細胞が呼び出され、内部組織と協調するかを詳述。
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5. Watt, F.M., & Fujiwara, H. (2011).
Cell-extracellular matrix interactions in normal and diseased skin.
Cold Spring Harbor Perspectives in Biology, 3(4), a005124.
DOI: 10.1101/cshperspect.a005124
皮膚の細胞外マトリックス(ECM)が、いかにして組織の配置や機能を制御するかを
まとめた総説。
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