顔の変形と老化

顔や体の形は、年齢とともに変化する。
この現象を皆さんは「老化」として捉えていると思います。成長の次に老いが訪れ、体の機能の衰退と同調して体の形状も崩れていく。なぜ、年齢とともに人間の形が変化するのか?それに答える前に、人間という生物の形から説明してみたいと思います。

手足が2本あって直立歩行する私たちの体の形。
これは、進化の過程で得た形です。長い年月を経て得られた形は、生きるための機能を発展させながら具現化されているので、分かりやすく言えば人知を超えて計算されつくした結果が「形」として現れている訳です。
ですから、手足の長さとかそれぞれの部位の位置なども理に適っている。例えば口と排泄する肛門は離れていないといけない、口と鼻は近くにないと腐食が分からない、目は上にあって遠くを見渡せ、しかも2個ないと遠近感が分かりにくい、方向を探る耳も左右2つあって上にあるべきとか、あるべきところにあるべきものがあり、動くときや道具を使うときにも適応できる四肢の長さや関節の配置、そしてすべての生命機能が働ける位置的整合性が考えつくされている訳です。
そして、生きている上で様々な原因によりその形状が崩れていく。特に顔は形の崩れが顕著です。目・鼻・口など顔のパーツの位置のズレは、体の機能そのものにも影響を与えます。何も目が口の横についてしまったら、という話ではありません。体全体の形から見ればわずかな位置のズレでも、位置的整合性をもつ人間の構造からみれば何らかの影響は出るはずです。

私の実感では、頭部の形の変化は全身のフォルムに連動し、感覚器や内臓などの機能、そして思考、感情にまで影響します。例えば形のズレは動きづらさを引き起こします。 それは、手足のような大きな動きだけでなく、顔の表情など無意識の反応の動きにまで及びます。そしてズレは体内部の位置的整合性も狂わし、体中に張り巡らされた血管や神経、各臓器の働きにまで影響を及ぼします。
さらに、細胞の活性化に必要な体内部の動き。肺や心臓、血管を流れる血液の動き、その動きからくる物理的な刺激が細胞を活性化させるというメカノバイオロジーで述べられた生命活動にも影響を与えています。老化するから顔や体の形が崩れるのでしょうか? 私は形の崩れが老化を引き起こしているのではないかと考えています。昨年出版された老化に関する著書をご存知でしょうか。

これはハーバード大学の遺伝学の教授が書かれ話題になった本です。
この分野ではトップクラスの研究者が、老化を病気として定義し老化は自然の摂理ではなく治療可能な病気だと述べています。要約すると、人間の体は細胞レベルで常に新しく生まれ変わっているのに、どうして老いるのか。DNAの情報は、加齢によって変化することはありません。子供も老人も、DNAによる若さを維持する生まれ変わりの指示は同じなのに、皮膚でもなぜこんなに違うのか。それは、DNAのデーター自体は変わらないけど、損傷によって生まれ変わる機能が誤作動を起こしている。それを修復する働きも備わっていて、それをエピゲノムというのですが、DNAの損傷が多いとエピゲノムの修復が間に合わず指示ミスを起こしてしまい正常に働けなくなるというのです。ですからこの一連の修復プログラムが正常に働けば、働くように治療すれば人間はまだまだ長生きできるように作られているということです。

DNAの損傷は後天的要因です。 DNAを傷つける、それを修復するエピゲノムの誤作動を起こさせる原因は、長年にわたる生活習慣や強いストレスからくるもの。それは、そのまま顔や体の崩れとして現れるので、形の崩れが老化を引き起こしていると考えているのです。
顔の変形や体のフォルムの崩れは、いろんな意味で体の反応の結果、現れた現象です。ですから、血圧の数値を気にするように、ご自身に起こる形そのものの変化も美容だけでなく命の営みを測る目安としてもっと意識する対象です。そして、老化で顔が変わっていくのではなく、顔の変形が老化を招いているという、まったく逆の認識をもつ必要があります。
それでは具体的に人間の形がどのように変形していくのか。 このイラストは体全体の形から見た変形の基本的現象です。

大きく言うとイラストの①②③の範囲が連動して形の崩れを起こします。
先ず①のエリアが一段ズレて顔が斜め下方向、外側に引っ張られるように広がります。すると眉尻、目尻、小鼻、口角が横に広がって下がります。 このズレからくる位置的整合性の狂いは顔を前に突き出させ、背中を盛り上がったように後ろに張り出させ、②のエリアに連動する訳です。

②のズレは、①で起こる前かがみのような前傾姿勢をさらに固定化させて、顔の位置が前から見たとき下がって見える。さらに肩とバストの範囲が横に広がり胸板が大きくなるのでその分バストが下がります。他には肩の内旋、二の腕が太くなる、肋骨の下あたりにチューブ状の膨らみが目立つようになります。

そして③の形の崩れは、腰回りが大きくなりお腹が前に突き出してくる。この状態のときには腸骨にゴリッとした硬い膨らみが纏っています。足が内旋して股関節が外側に斜めって浮き上がるような状態になります。また、仙腸関節が広がったままになって、お尻が四角く広がって見えます。

今、お話しした体の崩れ。皆さんはダイエットや筋トレ、運動によって改善しようとされる訳です。ですが、その前に体の位置的整合性のズレがあります。これは、皮膚からのアプローチでないと改善できないと考えています。
例えば、ズレたままダイエットや運動を試みても不自然な形になってしまう。ダイエットしても取れてほしい部分の脂肪がなかなかとれない、運動すれば肩回りがごつくなってしまったとか。 ですから、先ずは形という視点から体のズレを改善するとダイエットや運動のアプローチが活かされると思います。

では、体の変形がどのように起こるのか。
受精卵から体が出来上がる過程を通して、肌張力正顔法の考え方をご説明します。 体を形態から見ると変形の大きな原因は2つです。 1つは皮膚と内部のズレ。2つ目が軸とのズレです。 先ずは、受精卵から生体の形になる過程を踏まえて皮膚と内部のズレからご説明します。

受精卵の球体。それが空気が抜けたボールのように一部に窪みができ細胞層が3つに分かれます。

これを三胚葉といって、外胚葉、内胚葉、中胚葉の順で発生し成長していきます。

この3つはその後 体の何になっていくかの予定運命が定まっているんです。外胚葉は皮膚の表皮、感覚器官、中枢神 経系や末梢神経に分化します。内胚葉は消化器系と呼吸器系に、中胚葉は骨や筋肉、心臓や血管、 血液を形成します。

分かりやすく言うと、3つの細胞の塊がもととなって体の部品を作り上げていく訳です。
外胚葉は外の情報をキャッチして体に指令を出す仕組みを作り、内胚葉は外から栄養を取り込み吸収、排泄する機能、中胚葉は筋肉や骨格で体内を守り、血液を体内に巡らせ外胚葉と内胚葉の器官を サポートする機能です。
ここで大切なのは、体を作る3つの細胞はそれぞれ独立していること。機械でいうとそれぞれ独立した部品が互いに連動して機能をはたしているということです。分かりやすくイメージすると、体は1つの塊の ように見えますが、岩の集合体のゴーレムのように3つの細胞由来の岩がまとまって1つの立体形状を作り上げているようなものです。

単体が集まって1つの塊を作っている訳ですから、単体と単体の間には区別する境界が必ず存在しま す。その境界がズレることで全体の形状は変わります。そして、それぞれの単体にはそこになければ 成り立たない位置的整合性もあるということです。
ですから、大きな単位でいうと外胚葉、内胚葉、中胚葉由来の境界を持つ単体は結合してても本質的には相いれずズレるということ。では、具体的に何と何がズレるのか?
それは、外胚葉由来の皮膚とそれが包み込む内胚葉、中胚葉由来の内部です。内胚葉由来の呼吸器系、消化器系の内臓や中胚葉由来の筋肉や骨格が、外肺葉由来の皮膚表皮とズレます。

皮膚が内部とズレると、内部は次第に皮膚のズレに合わせるように移動します。これが体の形が変形する始まりです。

次に軸に対してのズレを説明します。
先ほど述べたようにズレるとう現象は2段階で起こります。まずは、外胚葉由来の表皮と、内胚葉、中胚葉由来の内部の位置関係がズレる。 次に内部も表皮のズレに合わせるようにズレる。 この場合、何からズレるのか? それはもともとの正常な位置関係を示す体全体の中心軸があり、それを基準にズレると考えています。

皮膚から変形にアプローチしていると、顔の変形が体の崩れと連動する不思議な現象を経験します。その現象を理解するうえで、発生学上の体軸の形成から私がイメージした中心軸という概念です。 その概念を説明すると、まず受精卵のかで、運命が定められた細胞群が正しい配置に移動して、3つに分かれていきます。そして外側、内側、その中間に細胞層ができます。それが、外胚葉、内胚葉、中胚葉です。このとき、3つの細胞群には内外、その中間という位置関係が決まる訳です。
その大きな位置関係を今の私たちの体に照らし合わせてイメージしてみます。 体の内部を包む外胚葉の皮膚の表皮に対して、口から肛門までの体を貫く内胚葉の消化管。この消化管を体の機能的形状を構成する中心軸と捉えています。

これは外肺葉が内胚葉を包み込むという動きの中で生じた運動軸だと考えています。
また、消化管はねじれて折り重なりながらお腹の中に納まっていますが、腸管が出きる過程では、体軸上に沿った状態で成長していきます。ですから、消化管に沿った形を持たない1本のラインが体の構造の中心軸であり、体の動きに対するバランス軸だと考えています。
そして腸管は口から肛門までぽっかりと開いた管です。ある意味、体の中に作られた外界です。体と外界を隔てる表皮、体の中に作られた体軸上の外界の管。この2つの位置関係のバランスは、間に挟まれた内部に影響するので、体の形状を左右する大きな要因です。

なぜ、顔が変形するとそれと連動して体の形状も崩れるのか。
それは口から肛門まで伸びた消化管に沿う軸と皮膚のズレが原因となり、体全体の形状を崩すと考えているのです。 今お話ししたのは、消化管をベースにした大きな軸ですが、形状を左右する軸となるものは他にもあります。内胚葉由来の咽頭や呼吸器系、耳管なども軸の役割を担っていると考えています。
形の崩れは、ズレが原因です。 私の推論ではズレには法則があります。先ず、皮膚の神経支配領域であるデルマトームの単位でズレます。


ズレるとこの皮膚節の境目にシワやたるみができる。 そのズレは大きく見ると、表皮の外胚葉と内胚葉由来の筋肉や骨とのズレを起こします。そして、外胚葉の表皮の歪みや下垂に合わせるように、内胚葉由来の内側も位置を変えてしまいます。すると、顔や体型が変形する。 この変形によって形状を維持しようとするバランス軸との位置関係がズレてしまい、動きの不具合や病名のつかない違和感を生んでしまうと考えています。

このズレによる形状の変化は、人間特有なのかもしれません。比較するのはおかしいのですが、例えば魚やヘビとか、発生時の原型をとどめている単純な構造をした生き物は加齢によって形が崩れるようには見えません。言い換えれば、見た目で老化度は分からないと思うのです。 複雑な構造をした人間。胴体から四肢をはやして、二本足で歩く構造。この形は後天的なさまざまな原因で三胚葉などの発生時の理や位置的整合性がズレやすいのではないでしょうか。

私たちは老化すると顔や体が崩れると単純に思い込んでいますが、本当は顔や体が崩れるのが原因となって老化の現象が現れるのかもしれません。もしかすると、顔や体の形を維持させると人間の寿命もさらに長くなるのではないでしょうか。

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