初めて正顔法を受けられた方。 その共通した感想ですが、こんなことを皆さん仰います。
施術が終わって自分の顔を見たとき、以前の顔と違うって驚かれます。でも何が変わったのかは、すぐに気づかないんですね。 「えっ、変わってるぅ~!」の次に、「えっ、なんだろう? 何が変わったんでしょう?」って聞かれるんです。
初めての方のカウンセリングで、何がお悩みですか?って聞くと、具体的にここが、とは皆さん仰らない。 というのも、年々ご自身の顔が変わってきているのには気づいているんですが、何がどう変わったのか分からない。目なのか、フェイスラインなのか、しまいには迷子になって「これって老化ですよね」って感じになる。
この2つのお客様の反応。どうして、そうなってしまうのか? 皆さんは顔に変化を求めるとき、個々のパーツに意識が向きます。分かりやすく言えば、目が大きく、鼻が高くとか、顔にあるパーツの違いで変化の度合いを測ろうとする習慣がついてるんです。
タレントやモデルさんを見るとき、目につきやすい顔の比較は顔のパーツです。ですから、無意識にそうなってしまうんだと思います。 ですが顔の変形という現象は個々のパーツの違いで認識しようとすると、変形が捉えられない。
なぜなら、顔の変形は、大きな範囲の塊ごと起こるからです。 私はこれを「顔のプレート」と呼んでいるんですが、顔は3つの大きなプレートで構成されています。
分かりやすく言えば、顔には3つの土台があって、3つの土台が組み合わさって1つの顔が成り立っているという考え方です。
顔の変形はまずこの3つのプレートのずれ、歪みから始まり、それぞれのプレート上にある目・鼻・口などのパーツの変形が起こる。
ですから、個々のパーツに意識が向くと大きな範囲での変形に気づかないんです。 だから「以前の顔と印象が違う」という漠然とした実感だけがあるという感じになります。
正顔法のお客様の実感の過程をいうと、先ずは顔の印象が変わったという気づきから始まって、改善が進むと目・鼻・口のパーツの位置の変化や歪みが意識できます。 次に顔の変形そのものが戻り始めると体の変化、体のフォルムや動きやすさを実感するというステップになってきます。
では、「顔のプレート」について詳しく説明してみます。 プレートは、地震の説明にででてくる地球表面を包んでいる岩盤層をイメージして下さい。
例えば、日本列島は4つのプレートの上に乗っています。この大きな岩盤層は、マントルの動きに引きずられて離れたり近づいたり、ずれたりして変動している訳です。
顔の構造もこれにそっくり。
私の実態観察でいうと顔は3つのプレート、独立した土台が3つ寄り合っているようなもの。簡単にイメージすると、このイラストのようなもの。
そして顔のプレートも変動します。岩盤のプレートのように離れたり近づいたり、ズレたりする訳です。プレート間の境界では、下に沈み込んだり盛り上がったり、複雑な変形を起こします。そしてその土台を一塊として大きくズレます。
顔に起こる変形は、この大きな3つの範囲が歪むという現象が先ずはベースにあります。 これが、顔を形成する3つのプレートです。
左が正常、右がプレートが変形した状態です。 この大きなプレートは、顔の症状や改善のステップからも言えます。
顔の症状でいうと、
①のプレートなら、額の皮膚が張り付き丸みを失って四角くなると鼻の形が崩れます。例えば小鼻が垂れ下がって鼻自体の位置が下がる。
②なら、下瞼が痩せると当時にこめかみが窪みます。
③ではフェイスラインの裏側が広がりチューブ状の盛り上がりができると、頬が下がりその連動で首に横ジワが現れます。
このように変形の症状で連動して起こるものをつなげていくと、ある範囲、プレートが浮かび上がるということです。 また施術も、例えば額の皮膚を正すときには、鼻を触らないと動かない。部分的なアプローチではなく、影響しあう範囲で正さないと変形は戻りません。ですから、先ずは大きな3つのプレート、特にその境目に起こっている状態を緩和させないと顔の変形にはアプローチできません。
私の実態観察からくる顔のプレートは、面白いことに顔の三叉神経の範囲と酷似しています。
三叉神経というのは、顔の皮膚感覚と顔面筋の運動感覚を担う混合神経のことで、それぞれ神経の支配領域があって、上から第1枝、第2枝、第3枝と呼ばれています。
この三叉神経の領域と私が示す顔の3つのプレートがなぜ、だぶるのか。明確な答えはありませんが、私の仮説として説明してみます。
私たちの体はもともと繰り返し構造でできています。 これは発生学、受精卵から体ができあがるまでの過程を学ぶ学問の知識になりますが、よく似た構造の部分を繰り返して作ることにより体が出来上がっていく訳です。 その繰り返しの単位を分節と言います。この分節構造を作るもとになっているのを「体節」と言います。 分かりやすく言えば、昆虫の幼虫にある縞模様。
これは、模様ではなく体節の名残です。私たちの体でいうと、背骨がそれにあたります。
同じような構造が規則的に繰り返されて体幹となる背骨を基準に皮膚や組織、神経などが頭部から順に位置を間違えずに作られていきます。 分かりやすく言えば、背骨の位置を基準に独立した細胞の塊が、目や口、内臓などを作り上げ体ができるということです。
その独立した細胞の節目の名残が、脊髄分節にしたがった帯状の神経支配領域として残っています。それを皮膚分節、デルマトームと言います。
このように、もともと体は分節構造で、独立したパーツが組み合わさってできでいる。そのパーツの範囲が神経支配の領域として残っているなら、顔の三叉神経の領域と合致する顔のプレートは、もともと独立していた範囲。その範囲のある部分に歪みが生じると、その範囲全体に波及し、その塊で大きく歪むということです。
第1枝には額、2枝には頬、3枝には口という動きのある部分があります。その動きに即して、それぞれのプレートも柔軟に動いていると考えています。 目の動きに違和感がある場合、目元にある問題の前に、プレート自体の振動が目の動きにかみ合っていないという現象があるんです。
ですから、まず大きな範囲のプレートの改善がないと顔の変形にはアプローチできないというのは、このことです。 では、顔にプレートがあるのなら体はどうなのか? 体にもあります。デルマトームのラインがひとつひとつのプレートです。
体のラインの崩れは全体が崩れたように見えますが、実はこのデルマトームのブロックの範囲で崩れています。その崩れが重なっているので、一見すると全体が崩れたように見えるのです。例えば輪切り状の胴体。このひとつひとつのデルマトーム範囲内の塊、その単位で崩れています。この変形の法則性は、顔のプレートとまったく同じです。
ここで、デルマトームに関する著書を引用して私の私見を説明してみます。 実はデルマトームのパターンは30種類以上発表されています。皮膚の神経分布という目に見えないものなので検査方法や個体差等により少し異なっており、確定したものはありません。
引用する著書は、今までのデルマトームを再検証して臨床に応用できる新しいデルマトームを作成し、それについて解説された本です。
デルマトームは医学的治療にも応用されていて、帯状疱疹は感染した神経線維の上にある皮膚に発生します。ですが背中側にできた帯状疱疹の出方がデルマトームとは合わない。今までのデルマトームは体の前面と後面が同じ高さの帯状で表されています。 そこで帯状疱疹の出方を観察すると、背中側の神経の後枝は真横ではなく、下に伸びていることが分かったんです(下図の赤ライン)。
例えばT2はT2の棘突起と同じ高さですが、それ以降徐々にズレはじめ、T5はT6の棘突起、T6はさらにズレてT7、T8。T7になるとT10棘突起まで下に神経がズレていたんです。
ここからは私の私見ですが、背中側のデルマトーム、神経が下に大きくズレていくこの現象は、外見上の体のラインの崩れとそっくりです。 もともとは、背面の神経もデルマトームのブロックに沿って横に伸びていた。それが、ブロック単位で下方に歪んで組織ごとズレていったのではないかと考えています。 そして、デルマトームの帯状のブロックのひとつひとつのズレは、真っすぐ下に落ちていくのではなく、お尻、肛門に向かって帯状に立体的に歪みます。
例えばこのイラストのように、口から肛門を結ぶラインの歪みに沿って体の各ブロックが歪み、体のラインを崩します。これは赤い線のように、顔の変形や肥大、下垂が強いとお尻の赤いラインの部分も同時に歪んでいます。
先ほど述べた書籍の著者は、東京医科大学名誉教授であり現代医学の第一人者です。その方が新しいデルマトームを作成されたのですが、それが東洋医学の兪穴、募穴のツボの位置と一致すると述べられていました。
ツボの概念については、私はあまり詳しくないのですが、経絡上の離れたツボを刺激することで問題点を改善するという手法は顔の変形においても実感としてもあります。 それは顔の変形を改善すると体に対しても何らかの改善が起きるという現象からです。
その因果関係を明確に答えることはできませんが、私の施術上の経験値から起こる現象を述べておきます。
・第1プレートは、足の裏の皮膚の硬さと連動している
・頭頂部が広がると、肩幅が大きくなる
・口の周りが硬く変形していると、下腹部が出る、足の裏や膝が硬くなる
・口の周りが痩せると、鎖骨が張り付くようになる
・鼻が硬く変形すると、首の後ろが張る、肋骨が広がって下がる
なぜ、加齢とともに顔や体の形が変化するのか?
身体や顔がどのように形を変えていくのか、私なりの仮説としてのブロック変形理論を解説してみました。
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