洗顔で顔の形が戻る

スキンケアで顔の形は変わるのか?
実際、日常で洗顔やローションでお肌のお手入れをしていて、 肌の変化はあっても、顔の形まで変わるなんて思えない。それが普通の反応です。でも、洗顔の方法、そしてスキンケアの意味や目的といった意識そのものを変えることで、顔の形まで変化させるチカラがスキンケアにはあります。

なぜスキンケアをするのか?
目的は美容、お肌を美しく保つ為のお手入れ。でもスキンケアという行為による可能性から見れば、それは多くの中の一つに過ぎないと考えています。先ずは、スキンケア=見た目の美容というイメージを根底から変える必要があります。

スキンケアの可能性を理解するために、 「メカノバイオロジー」という学問領域で解明されている体の構造と機能を私が理解した範囲で説明してみます。

メカノバイオロジーは、物理的刺激が細胞や組織、臓器にどのような影響を与えるかを研究する物理学、工学、医学、生物学が融合した新しい研究領域です。簡潔に言うと、私たち生物は様々な物理的刺激がないと生命が維持できないということ。
そして、物理的刺激が加わっていることによって、体の各構成要素はその形態、機能 を維持している。そのメカニズムを解き明かす学問です。この物理的刺激は外部と内部に分けられます。

外部の物理的刺激。これは主に、地球の環境因子。地球上で進化した生物は、重力や大気圧、水圧など様々な物理的な力を受けながら体が形成され維持されています。

例えば骨や筋肉の成長や維持には、力学的負荷を必要とします。宇宙飛行士が地球に戻ると歩けなくなる。その原因は骨、関節軟骨、筋肉の恒常性維持ができなくなること。骨でいうと、重力がなくなることによって骨密度が減少します。
これは重力を受けながら体を支える、動くという負荷がないと、骨をつくる骨芽細胞と骨を壊す破骨細胞の代謝のバランスが崩れるからです。関節軟骨は重力の負荷のもと関節を動かすことによって、関節液が軟骨細胞に染み込み栄養と酸素を届けています。筋肉も、重力の環境下で動かすことにより正常に動き、また増えていきます。逆なら委縮していきます。重力のない宇宙空間で、幹細胞を骨や軟骨に注射したとしても治療にはならない。それは、地球の環境からくる物理的刺激によって細胞が恒常性を維持しているからだと、メカノバイオロジーでは述べられています。
次に、内部の物理的刺激。これは体内で生まれる力を指します。体の中では、臓器を始め様々なものが常に動いています。動いているということは、そこに力が発生していますよね。心臓は鼓動し、血液は血管を流れ、肺は呼吸で動いています。日常の動作で絶えず筋肉や皮膚は伸び縮みを繰り返しています。そして、器官や組織を構成する細胞自体も物理的な力を受けて形態変化したり、細胞の内外で物質の移動を行って体を維持していることが解明されつつあります。

この体内に発生した力が生命維持にどのように関わっているのか、血管で説明してみます。

心臓は拍動の力で血液を全身に送ります。 流れる血液は、血管を押し広げます。そのとき血管が変形した力を細胞が感知して、血管の口径を調節し血流量を決める。これは血管が変形した力を細胞が感知して、その情報を血管の口径を調節する血管平滑筋にフィードバックし生命活動を維持しているということです。


このような力学的反応は、細胞レベルから臓器に至るまでさまざまな部分で行われ、力の発生➔変形➔感知➔フィードバックが繰り返されて命の根幹機能を制御しています。

メカノバイオロジーの基礎研究は、形成外科での傷の治療や再生医療など多方面にわたって応用されています。私たちになじみのある美容分野でも、美容ローラーやストレッチ、マッサージ的手法の皮膚刺激で細胞の活性化を促そうとしています。
また、発毛促進につながる振動圧刺激から毛髪再生が研究されてもいます。従来から物理的刺激を加える医療、器具を使った筋肉のリハビリや口腔外科の矯正治療はあったのですが、関節補助や矯正的意味合いが主でしかなかった。それがメカノバイオロジーの研究によって、細胞は化学刺激に反応するだけでなく、力を感じる受容体を持ち、その情報を伝達して組織、臓器の形態や機能を維持している。その仕組みが分かり始めると、物理的刺激を利用した手法は、循環器、呼吸器、骨や筋系の疾患やがん治療など幅広い分野でメカノバイオロジーの観点から研究され、革新的な医療機器、医療技術として臨床に応用されようとしています。

体の仕組みは、まだわずかしか解明されていません。メカノバイオロッジ―によって、そのひとつが分かり始めた。それは、全身に血液が流れ新陳代謝が行われているように、物理的な力の連鎖が体内を駆け巡って、形態や機能を維持しているということです。

それでは、なぜスキンケアで顔の形が変わるのか、この疑問に戻ります。
私のテーマは、「顔に起こる変形」です。スキンケアで、顔の変形に対してどこまでアプローチできるのか、十数年にわたってあれこれ可能性を試してみました。すると、洗顔でいくつかの要素を組み合わせたとき、目の開き具合、眉がしらの位置、フェイスラインや顔全体のふっくら感などが総合して、顔の印象が変わる現象が起きました。

これは、何らかの原因による顔の皮膚張力の異常が顔の形を変えてしまっていた。それが、洗顔によって張力の異常な負荷が緩和され、顔の部位、目や鼻の位置がずらされていたのがもとの位置に戻ったことによるものだと考えています。ですが、起こった現象をもっとはっきり捉えて理解したい。そのベースになったのが、メカノバイオロジーから得られた知識です。

それでは、この知識をあてはめながらスキンケアで起こった「顔の形が変わる」という現象を説明します。
物理的刺激が、形態変化を促す。私が行う独自の洗顔で、皮膚に与える物理的刺激は何にあたるのか。

それは、
・泡の圧力
・水中での振動
・水の温度差
そこに物理的刺激を与えるときの条件が加わります
・角層に浸透させる水分量
・顔の部分で異なる泡の微妙な圧力の強さ
・皮膚の変化に合わせた泡のタイミングと順序 そして、使用するアイテムの成分。
これはミネラルや上質な水など自然界由来、体に本来あるものを主成分とした化学的作用。

変化を促す力学的負荷がスキンケアの手法なら、使用するアイテムの成分は皮膚への化学的刺激。この2つが相乗効果として合致したとき、スキンケアで顔のパーツの位置の変化が起こります。
石鹸やローションなどスキンケアアイテムの成分によっては、変形が加速することもあります。美白や潤いを目的とした成分とそれを過剰に顔につけることによって皮膚にロックをかけてしまうのです。また、これは私の観察からくる仮説ですが、外部からの力の作用は、顔に水分が十分に浸透している状態のとき、その反応はより活性化されるように感じます。ですから顔を濡らす洗顔は皮膚張力をもとに戻す行為でもあるので、その手法と皮膚に与える成分は重要です。

そして、もうひとつ。そもそも頭部、顔という部位はメカノバイオロジーの観点から見ると、力の発生源として影響が強い部位ではないのか。顔は手足のように大きく動く訳ではありませんが、食べるとき、会話するとき、口を動かします。人間の感覚器、目、耳、鼻、舌、皮膚などのすべてが顔にあり動いています。特に皮膚は、動きに合わせ伸縮するだけでなく、温度や機械刺激に対する触覚器を備えています。

そして、心の反応も顔に現れます。ですから、体の中で常に動いている部位は、心臓と顔です。生体内で生じる力の連鎖が生命維持に不可欠ならば、顔の動きからくる力の連鎖が阻害されれば、全身に何らかの影響を与えてしまうのではないでしょうか。

頭部、顔という部位をもう少し詳しく見ていきます。これは発生学の視点です。進化の過程をみると、私たち脊椎動物の祖先は、筒状の形をした生物として誕生しました。 不思議なんですが、進化に費やした10億年という歳月。その進化の形状を、胎児の成長の2か月間で再現されていくんです。

胎児の成長段階を見ていくと、始めに頭部と尾っぽが作られます。そして、顔を先端に背骨と組織が伸びていき、それに沿って空洞の消化管が作られる。

もともと人間の形は、頭部からバランスを取りながら作られていくなら、体の先端にあたるのは顔です。
そもそも顔が体の先端にあたる部位だということに注目しています。 魚類に例えると、水中の動きは顔を先端に水の抵抗を受けながら泳いでいます。常に先端の顔に刺激を受けながら生きている。 顔は物理的刺激を特に鋭敏に感じ、体に作用できる部位ではないでしょうか。
そして、生き物の先端に受ける物理的刺激を何らかの手法でコントロールできれば、体内の力の連鎖を活発化させ、形態や機能を正常に戻すよう促す効果がある筈です。ですから私はスキンケアという手法で、皮膚刺激をコントロールしながら、顔の形状に変化を与えていると考えています。

今からお話しするのは肌張力正顔法のベースになる考え方で、科学的根拠があるものではなく、私独自の考え方として捉えて下さい。 顔が発生させる物理的な力は、2つある。1つは、皆さんもイメージできる顔の動きからくる力。感覚器やコミュニケーションの動きです。そして2つ目は、形を維持するベクトル。これは、受精卵から胎児へと体が作られる過程で起こる力です。球体から人の形へと変化する訳ですから、そこには力が働いています。その力が体の形状を維持する力として今も残っていると考えています。

これは、5週間後の胚の写真ですが、中心に向かって巻き込むように動きながら顔が作られていきます。この中心に向かう3つのベクトルが、皮膚の張力として顔の形状を維持する役割を担っている。
そしてその3つの力が及ぶ範囲は、3つのゾーンに分けられます。それは三叉神経の支配領域に似通っています。

先ほど発生学でお話ししたように、尻尾部分から細胞が増殖し、前へ前へと押し出されて頭部から順に体が作られていきます。その形跡は体節と言われ、ミミズや昆虫の幼虫には見られます。

人間には目で見られる形で残っていませんが、神経の支配領域、皮膚ならこのように帯状に分布しています。

顔でいうなら、三叉神経の支配領域。 私が定義した顔を構成する3つのゾーンも、三叉神経の支配領域に近いことから、影響を強く受けあう領域として、観察できたのだと思います。

つまり、部分的にアプローチしてもその領域全体に取り組まなければ、改善につながらない。顔が発生させる物理的な力、形を維持するベクトルは、この3つのゾーンで起こります。地球のプレートのように、3つの岩盤が近寄ったり離れたり、ぶつかりあって盛り上がったりします。

顔の動きにストレスがない状態では、第1と第3のゾーンが中心に向かい、第2ゾーンがその力でふっくら盛り上がっている。この力のベクトルが働いているとき、目も開けやすく、各パーツも正常な位置に戻り、 強い負荷で歪められていた顔がもとの形状として現れます。

食べる、話す口の動き。見る、感情を現す目の動き。感覚器として動く顔や皮膚の動きに加えて形状を維持する3つのゾーンの動き。 これらの様々な顔の動きから発せられた物理的な力が正常な刺激として体内を駆け巡るとき、細胞、組織,器官の階層でさまざまな作用を起こし健康が維持できると考えます。ですから、顔だけのアプローチが、体軸や四肢の冷え、むくみなどにまで影響を与えるのではないでしょうか。

メカノバイオロジ―の観点からいえば、顔から生じる力の刺激は生命活動にとって重要だということ。そして、スキンケアは単なる美容のお手入れだけでなく、形状の変化までもたらし、健康促進という可能性まで広がっているということです。

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