皮膚って、なに?って言われたら、皆さんはどうイメージします?
まず、皮膚を3つの視点に分けてみます。
1つ目は、美容の視点から見た皮膚。 皮膚というより「お肌」。お肌をいかに美しく保たせるか、という視点です。化粧品の効果を伝える目的で、角層のターンオーバーや肌の仕組みが語られている訳です。エステとか、美容施術になると表情筋の知識がそこに加わります。
2つ目は、皮膚科学の視点から見た皮膚。これは美容対象としての「お肌」とは違い、皮膚を1つの臓器として見ています。ですから、体全体に対しての皮膚という臓器の働き、役割の視点から皮膚を捉えて日々研究されている訳です。そこには私たちがイメージする皮膚とは違う世界があります。このあたりは、傳田光洋先生が多数の著書をだしておられるます。関心のある方は、ぜひ読んでみてください。
そして3つ目の視点。 これは肌張力正顔法の視点になりますが、顔、身体の形からみた皮膚です。
今回は、美容や皮膚科学の視点から皮膚の構造と機能を説明してみまます。
皮膚は体の中で一番大きな臓器って言われています。
面積は成人でだいたい畳1枚分、重さは皮下脂肪まで入れると約3~4kg、けっこう重いでしょ。厚さは、体の場所によって違いますが最も厚いのは足の裏、最も薄いのはまぶたです。
表皮は0.06~0.2㎜でだいたいサランラップ1枚から2枚重ねた厚みぐらいです。真皮は1~4㎜なので、厚めの下敷きぐらい。
皮膚は3層構造。
表面から「表皮」、「真皮」、「皮下組織」の層状構造になっています。そして役割がそれぞれ違う。
・表皮は、外部の悪影響から内部を守る役割。ほとんどがケラチノサイトで形成されています。
・真皮は、線維状タンパク質の結合組織で表皮を支える役割。栄養補給や老廃物を拡散してくれます。
・皮下組織 は主に脂肪繊維から成り、皮膚の活力
・エネルギーの貯蔵庫としての役割。
ここで大切なのは「表皮」です!
表皮も層状の構造になっていて、角層、顆粒層、有棘層、基底層からなります。角層は、バリア機能と保湿機能の役割。皮膚表面から、ほこりや菌が体内に入るのを防いだり、体が乾燥しないように体の水分が過剰に蒸散するのを防いでいる訳です。
実は、それだけではないんです。皮膚科学の視点では、この表皮が人間の五感、触覚・聴覚・視覚・味覚・嗅覚と同様の働きをして、脳を介さず直接体の機能に働きかけていることが分かり始めたんです。
もともと皮膚には接触刺激を感じ取る機能が備わっています。これは原始的な感覚で危険を察知して、体を守る反応です。
熱い冷たいの温度はイラストのブルーの受容器、茶色が強く押される圧力で、物に触れたときに起こる触覚は赤の部分、振動は緑で感知しています。皆さんも実感としてありますよね。 皮膚の五感は、ほとんど無意識レベルの反応です。
聴覚なら、耳で聞こえない高周波を表皮で感知してる。表皮が音圧として感知し、脳波や血中ホルモン量に変化を与え恍惚状態になったり、逆に目や耳で認識する前に高周波を皮膚が感知し、瞬間的に危険を察知し反応するとか。
視覚でいうと、表皮には網膜にある「光」に反応する受容体が存在することが発見されています。映像のように知覚はできませんが、可視光の感覚があり、それが無意識に体に作用しているということです。生体リズムを改善する光療法などは、目だけじゃなく皮膚も反応しているというこです。
味覚は、舌にある、酸っぱさ、辛み、甘さ、旨味などに応答する受容体が表皮にも存在していることが発見されています。
嗅覚なら、ケラチノサイトにハーブや白檀などの香気成分に反応する受容体があり、アロマテラピーには鼻からの効果に加え、皮膚に直接作用している可能性があるということです。
この五感を感じ取っているのが、表皮のほとんどを占めるケラチノサイト。皆さんも美容情報で聞いたことがありませんか?表皮の角化を司る細胞です。
表皮の一番下の基底層で生成され、細胞分裂しながら約2週間ほどで アカとなって剥離します。核を失い死んで角質層になり、やがて垢となって落ちてゆく細胞が皮膚感覚を担っているって、驚きですよね。
そしてケラチノサイトには感知した情報をもとに、いかに対応するか、独自に思考する能力があります。
ケラチノサイトで感知して、その情報を電気信号化して、脳を介さず直接、神経系、循環器系、内分泌系に指令をだす独自のネットワークをもつことが発見されています。 大脳の高度な情報処理を行う受容体や情報伝達物質が表皮に存在してることが発見されていますが、もともとこの表皮細胞は、外胚葉由来。脳や脊髄、神経系、感覚器ともとは同じ細胞なんです。
ですから、存在してもおかしくないんですが、皮膚に?っていう意外性がありますよね。 他にも、脳からの信号を待つことなく有害無害を判断し行動を起こす臓器があります。 それが、「腸」です。 皮膚や腸も考える臓器っていうのは、不思議でしょ。
表皮のケラチノサイトには、情報をキャッチするセンサーと情報を処理し、発信する機能があることがお分かりいただけてでしょうか。この複雑で繊細な機能を保つために、細胞の劣化がおこらないような仕組みになっています。
これが、角化、ターンオーバーなんです。これにより常に新しく更新され、皮膚の感受性を鋭敏にし情報処理と発信を行っている訳です。 このように、表皮は体の健康を維持している側面があるということです。
健康だけじゃなく、心や感情にも影響を与えます。例えば、温かいものに触れると心が落ち着くとか、幼児期のスキンシップ、皮膚体験がないと子供の性格行動に悪影響があるとか、皮膚からの体験はホルモンを通して心や感情に大きな影響を与えているんです。
また、心が傷ついても、皮膚が傷ついても、同じストレス応答が起こることが確認されています。皮膚が健康じゃないと精神的に落ち込みやすくなる、ネガティブ思考になりやすいということです。
このように皮膚科学の視点で見ると、皮膚は心身に大きな影響をもつ臓器で、美容的側面だけで捉えるものではないということがイメージできたでしょうか?
次回は、肌張力正顔法の視点。顔、身体の形からみた皮膚をご紹介します。
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