Why I Do This — 肌張力正顔法® 開発者 くろかわゆか
黒河由香。京都。1963年生まれ。
以下は、ひとつの身体に起きたことと、そこから始まった問いの記録です。
二十二歳まで、私はただ美容が好きなだけの女子でした。高校は寄宿舎で、肌の話をしながら眠りにつく。それが幸せでした。
それが、交通事故で終わりました。
顔の形成手術を、覚えているだけで八十九回。縫合は二千針を超えました。当時の常識を覆す術式に挑んだ医師が、私の顔を再建してくれました。外見は、戻りました。
崩れたのは、身体でした。
年月が経つほど、顔の奥の化膿は続きます。体型は崩れ、背中が曲がり、姿勢が老いていくのを感じました。
どこへ行っても、取り合ってもらえない。検査に出ない。病名がつかない。だから、治療もされない。
自分の身体を自分で整えたい一心で、中国整体を五十万円以上かけて習得しました。身体には、何の効果もありませんでした。
筋膜からも、骨格からも苦痛には届かなかった。残っていたのは、皮膚だけでした。
ある日、洗顔の途中で気づきました。
——あれ。今、身体が軽い。
洗ったあとの、あの全身に張りつめた違和感が消えていました。皮膚の感覚が、戻ってきていたのです。
理論があって試したのではありません。先に、現象がありました。
ぬるま湯の温度と角度。泡を置く位置。タオルが触れる一瞬。毎日誰もが繰り返している動作に、設計がなかった。答えがあったのです。
図 — 顔面皮膚に累積する、設計不在の入力
顔が戻り、身体が戻り、そして若さが戻りました。
Fig. 2 — 三十二歳から、五十五歳へ
六十三歳。十三センチのヒールで一日中歩き、重い荷物を持って走り回っています。真夏に電気毛布を必要としていた頃とは、別の身体になりました。
けれど、話しても信じてもらえません。洗顔で健康になるなど、頭がおかしいと言わんばかりの視線を、何度も浴びました。
日本語では、これは言えない。
だから私は、英語で話しました。YouTubeに五本、上げただけです。
五年経ちました。“rejuvenation of body shape” という検索で、私の動画は今も一位から五位のあいだにあります(2026年8月時点)。五本すべてが私のもので埋まっている日もあります。
再生回数が多いわけではありません。人が押し寄せたのでもありません。評価しているのは、検索の仕組みのほうです。それでも、内容そのものが五年間、上位に置かれ続けました。
そこで初めて思ったのです。これは、もしかすると価値があるものなのかもしれない、と。
そこから、更に多くの論文を読み始めました。
読んで、驚きました。顔の皮膚が全身の健康に影響することは、すでに書かれていたのです。一本や二本ではありません。
けれど、そこで止まっていました。
論文の中で指摘されたまま、誰もその先へ進んでいない。現実の世界では、顔は相変わらず美容の対象としてしか語られていない。書かれていることと、行われていることのあいだに、大きな溝がありました。
そして、どうしてもこれを届けなければいけないと決めました。
私自身の改善に取り組んだ過程は、論文の知識を手法に変える取り組みだったのです。
World-class Science
XPRIZE Healthspan
Neurovascular Skin Lab — Founder & Administrator
XPRIZE Healthspan に、研究チーム Neurovascular Skin Lab を立ち上げました。角層を上流の変数として扱う——それが、私が持ち込んだ問いです。
その後、米国食品医薬品局(FDA)を支援するレーガン・ユードール財団から、2026年 規制科学イノベーション賞の案内が届きました。応募書類を提出し、受理されています。現在、審査中です。
一人の身体に起きたことは、まだ証明ではありません。だから、検証される場所に置いたのです。
Yuka Kurokawa — Independent Researcher & Practitioner
NEUROVA SKIN LAB — Kyoto, Japan